pdftex と pdflatex のデフォルトコマンドは「pdftex --shell-escape」と「pdflatex --shell-escape」です。このテキストの「shell-escape」の部分はタイプセット中に pdftex が他のプログラムを実行するのを許可しています。これが有用なのは、もし TeX がサポートしていない形式のグラフィック・ファイルがあった場合に、他のプログラムを呼び出して自動的にサポートしている形式に変換することができるからです。たとえば、デフォルトの LaTeX テンプレートでは tif ファイルを自動的に png に変換し、eps ファイルを pdf に変換します。
これによって生じる問題を心配するユーザもいるかもしれません。「shell-escape」フラグは pdftex がどのようなプログラムを実行することでも許可してしまいます。それゆえ、不満を抱く学生がEメールで送り付けてきた TeX ソースをタイプセットしたら、あなたのディレクトリにあったファイルが消されてしまっている──といったことも、ないではありません。
その危険性は軽微なものだ──と私は思います。害を為すソースファイルは意図的に作成しなければならないでしょうが、TeX ソースを通じて「ウィルス」を送り付けるというのは、いささか難儀なことに思われます。それはともかく、ユーザが自身を守るための方法が2つあります。最初にして最も簡単な方法は、環境設定内の2箇所にある「--shell-escape」という文字列を削除してしまい、グラフィック・ファイルの変換をすべて手動で行なうことです。
TeXShop では、それとは異なる保護も提供しています。環境設定パネルの「内部設定」タブにある「Shell Escape を警告」がそれです。この項目は当初はオフになっています。これをオンにし「shell-escape」が有効になっていれば、あるファイルを TeXShop で初めてタイプセットするときに、その特定のファイルに対して shell-escape をオフにすることができる警告ダイアログが現われます。このダイアログは、TeXShop の起動中には、その特定のファイルに対してくりかえし表示されることはありません。なので、ユーザ自身のファイルは「shell-escape」を使ってタイプセットでき、メールで受け取ったファイルは「shell-escape」を用いずにタイプセットできます。